電気生理学計測を用いた科学発見ロボットシステム / Science Exploring Robot System using Electrophysiology





創薬の分野において,”イオンチャネル創薬”と呼ばれる分野があります.これは細胞の膜の表面に存在する
イオンチャネルを標的として,その開閉動作の程度を変調させる化合物を探索することをさします.
イオンチャネルの開閉動作は,細胞膜を隔てた電気化学特性を制御し,最終的に生体の機能に変化を起こすことができます.
身近な例だと,ガンマアミノ酪酸(γ-aminobutyric acid, GABA)受容体などは,GABAに反応して過分極を示す特性を利用して.
神経伝達の阻害を誘起し,最終的にストレスの緩和に効果のある薬として用いられています.
イオンチャネルの特性を計測する手段の一つとして,2電極ボルテージクランプ法(TEVC Method)があります.
これは,サンプルとしてアフリカツメガエルの卵母細胞にRNAを注入し,特定のチャネルを細胞膜発現させて,
その後細胞膜にガラス電極を挿入することで,電気生理学計測を行うものです.
この作業は,人間の手技で行われることが多いため,しばしば手技に起因するバイアス,誤差を過分に含む事があります
また,膨大な実験条件が要求されるため,実験者への負荷が非常に大きなものとなります.
当研究グループでは,顕微鏡下で高精度な微細作業が可能なロボットシステムを構築し,
AIロボットによる化合物探索(AIによる化合物予測 >> 化合物合成 >> AIロボットによる自律実験,レポートのサイクル)に取り組んでいます.
特に,人が暗黙知として行っていた,経験や感覚に基づく高精度な作業を,センサ,アクチュエータの統合を進めることで,
電気化学計測実験操作の堅牢性を有する自動化,さらには知能化を含む自律化を目指しています.
現時点でPOC実験プラットフォームの構築と,計測が自律的に進むまでに到達しましたが,
様々な実験に広範に適用可能とするには,さらなるアップグレードが必要です.
特に高精度な計測に主眼をおいたロボット,システム統合技術に興味のある学生の皆様を募集中です.
主たる参考文献 / Remarkable References
- Shuzhang Liang, Satoshi Amaya, Hirotaka Sugiura, Hao Mo, Yuguo Dai, and Fumihito Arai, "A Microfluidic Chip on a Robotic Manipulator for Loadingand Reloading of Oocytes", Advanced Intelligent Systems 2024, 10.1002/aisy.202400185
- Otani Kazusa, Sugiura Hirotaka, Turan Bilal, Satoshi Amaya, Shunya Saito, Nobuyuki Uozumi, Fumihito Arai, Robotic micromanipulation system for electrophysiology experiments using oocyte, Proceedings of International Symposium on Micro-Nanomechatronics and Human Science (MHS) 2024, Japan, BEST PAPER AWARD
- K. Otani, H. Sugiura, S. Watanabe, T. Bilal, S. Amaya, F. Arai, Robotic micromanipulation system for electrophysiology experiments using oocyte, Proceedings of IEEE International Conference on Robotics and Automations(ICRA), 2024
- Hao Mo, 杉浦広峻.Turan Bilal, Haoran Yao, 安藤大登,Shuzhang Liang, 天谷諭,新井史人, “5軸RCM機構を用いた,卵母細胞の位置/姿勢制御”, 日本ロボット学会学術講演会, 2024